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歯科医師さんの外科治療
第10回と第11回でお話しした治療法によって、たいていの歯周炎は治るのですが、それでも症状がよくならない場合はどうしたらよいでしょうか?たとえば歯周ポケットが残っていたり、歯周組織の状態が悪く、歯周炎が再発するだろうと歯医者さんが判断した場合には外科的な治療が行われます。今回は外科的な治療とはいったいどんなものなのか、お話ししていきます。基本治療でスケーリング・ルートプレーニングをしても、歯周ポケットがとても深いと、十分なルートプレーニングができずに歯石が残ってしまうことがあります。すると歯肉の炎症が治りきらずに歯周ポケットが残ってしまいます。この場合に行われるのが歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)という手術です(フラップ手術ともいいます)。どのような手術なのでしょうか?図1をみながら手術の様子を説明していきましょう。
まず初めに局所麻酔をして、病気にかかっている部分を歯周ポケットにそって切除します(上)。次に歯肉を歯の根っこと歯槽骨から剥離(はがす)します(中)。こうして歯の根っこの部分を直接目で見えるようにして、基本治療で取ることのできなかった歯石や、十分にルートプレーニングができていなかった部分にスケーリング・ルートプレーニングを行います。
スケーリング・ルートプレーニングが終わったら歯肉を元の位置に戻して縫いあわせます(下)。縫った傷は1週間から10日で治り、この手術によって歯周ポケットはなくなります。下の図2と図3は剥離掻爬術を受けた患者さんの手術前と後の歯肉の状態です。
<図1:剥離掻爬術の手術の様子を表している模式図です。>上:切開を入れている状態です。中:歯肉を根面と歯槽骨から剥離している状態です。下:歯肉を縫いあわせた状態です。
<図2>第9回にも掲載した患者さんの様子です。こちらは術前の状態です。図3と比較しやすいように歯の治療をした跡を○で囲みました。
<図3>術後の状態です。基本治療と歯肉剥離掻爬術を行って6ヶ月後の状態です。
<図4>歯根の間(根分岐部といいます)のX線写真像です。歯周組織が破壊されているのがわかりますね。
<図5>歯髄を除去して歯冠を2分割した状態です。プラークコントロールがしやすくなりました。
<図6>金属の冠を入れた状態です。歯と歯槽骨の形をなおすワケ
剥離掻爬術では歯肉を歯根の面と歯槽骨からはがすので、歯の周囲にある歯槽骨の状態を見ることができるのが大きな点です。歯槽骨の形態が悪い場合には、この手術をしてなおします。これは手術を行った後の歯肉の形が歯槽骨の形態の影響を受けることが多いためです。例えば歯と歯との間の骨にくぼみがあれば、手術後にも歯肉にくぼみが見られるようになり、そうなると、その場所にプラークが付きやすくなり、取り除くのが難しくなります。このために手術をするというわけですね。
臼歯には歯の根っこが2本または3本あることが多いのですが、もしその歯根の間にある歯周組織が破壊されて、そこで歯周ポケットが作られると、患者さんまたは歯医者さんによるプラークコントロールが難しくなります。この場合、歯を2つに分割したり、1つの根っこを抜いたり、壊れた歯周組織を直接目で見えるようにする手術をすることがあるのです。
では図4〜図6の患者さんの写真をみてみましょう。図4は根の間の歯周組織が破壊されている状態を示しているX線写真です。この患者さんの場合、歯肉でこの部分が覆われていて歯ブラシなどがその部分に届かないためプラークコントロールができませんでした。そこでこの患者さんの場合、根っこの間のプラークコントロールをできるようにするため図5のように歯を分割したのです。その後、歯周組織が健康な状態になったので図6のように金属の冠を付けました。
歯肉を作る手術
歯肉の形が悪い場合には、歯肉の形を治すための手術をします。歯肉の形が悪いとプラークコントロールがしにくかったり、プラークがたまりやすくなるからです。図7の患者さんの写真をみてみましょう。下の前歯の歯肉のフチが下に下がって歯肉が少なくなっているのがわかりますね。このような状態になると、歯ブラシを使ったとき毛先が柔らかい粘膜に当たって痛みを感じるようになってきます。そこで行ったのが口蓋(上顎の歯の内側の組織)の粘膜を歯肉が少ない場所に移植して歯肉のような組織を作るという手術です。図8が手術の後の様子ですが、図7との違いがわかるでしょうか?歯肉のような組織がつくられたことで歯ブラシが使いやすい状態になりました。
<図7>前歯2本の歯肉が退縮(たいしゅく)し、歯周組織がほとんどなくなった状態です。歯ブラシがつかいにくくなるためにプラークの付着が見られます。
<図8>術後1年目の状態で、メインテナンス治療に入って6ヶ月目の状態です。メインテナンスの治療を始める前なので、まだ歯根にプラークがあり、歯石も沈着しています。
歯周組織を再生させる治療
<図9>再生療法を示した模式図です。膜を入れて縫合した状態です。
<図10>再生治療後の状態を示した模式図です。
”歯周病は治る?”の回でお話ししたように、歯周組織の再生は歯周組織の破壊のしかたが特定な形であった場合には可能になっています。その”特定の形”というのは歯周組織の破壊が図9のように斜めに起きている場合です。再生を起こさせるためには、破壊されている部位を特殊な薄い膜(遮断膜)を使います。
手術は剥離掻爬手術と同じような方法で行われるのですが、縫い合わせる前に破壊している部分の上を膜で被ってしまいます(図9)。すると図10のような組織の再生が起きてくるのです。図11と図12は、再生前と再生後の様子がわかるX線写真です。
再生が可能な範囲は遮断膜で覆うことができる範囲です。遮断膜を図9に示すように歯肉で覆わなければならないので、遮断膜を付けられる位置には限界があります。
組織の再生の方法としては、遮断膜を使用しないで、動物由来の材料を歯根に塗って再生を起こさせる方法もあります。
<図11>第9回に掲載してある再生治療前のX線写真です。
<図12>第9回に掲載してある再生治療後のX線写真です。組織の再生が認められます。
口の中にもメインテナンスが必要です
<図13>図8の患者さんです。メインテナンスを始めて2年経過した状態です。歯周組織が健康な状態で保たれているのがわかります。
治療が終わって歯周組織が健康な状態になった後でも、それですべて終わり、というわけではありません。その健康な状態を維持するために定期的な診査と、必要な場合には治療がおこなわれるのです。この行為をメインテナンス治療と呼んでいます。定期的な診査では、歯肉が再び炎症を起こしていないか、プラークが付着していないかなどをチェックします。図13は図8の患者さんがメインテナンス治療を続け、健康な状態が保たれている様子がわかります。口の中にもメインテナンスが必要なんですね。
今回は、前回に引き続いて歯周病の治療方法をお話ししましたが、歯周病をなくすためににさまざまな治療が歯科医師さんによって行われていることを知ることができました。
次回は歯周病の予防方法についてお話ししていく予定です。そもそも歯周病になりにくくするにはどうしたらよいのか、という問題は皆さんが一番知りたいことかもしれませんね。全12回のコラムを予定を変更してお届けしますので、ぜひ第13回も読んでくださいね。
Sueda Dental Clinic. All Rights Resereved.
まず初めに局所麻酔をして、病気にかかっている部分を歯周ポケットにそって切除します(上)。次に歯肉を歯の根っこと歯槽骨から剥離(はがす)します(中)。こうして歯の根っこの部分を直接目で見えるようにして、基本治療で取ることのできなかった歯石や、十分にルートプレーニングができていなかった部分にスケーリング・ルートプレーニングを行います。
歯科医師さんの外科治療
第10回と第11回でお話しした治療法によって、たいていの歯周炎は治るのですが、それでも症状がよくならない場合はどうしたらよいでしょうか?たとえば歯周ポケットが残っていたり、歯周組織の状態が悪く、歯周炎が再発するだろうと歯医者さんが判断した場合には外科的な治療が行われます。今回は外科的な治療とはいったいどんなものなのか、お話ししていきます。基本治療でスケーリング・ルートプレーニングをしても、歯周ポケットがとても深いと、十分なルートプレーニングができずに歯石が残ってしまうことがあります。すると歯肉の炎症が治りきらずに歯周ポケットが残ってしまいます。この場合に行われるのが歯肉剥離掻爬術(しにくはくりそうはじゅつ)という手術です(フラップ手術ともいいます)。どのような手術なのでしょうか?図1をみながら手術の様子を説明していきましょう。
<図1:剥離掻爬術の手術の様子を表している模式図です。>上:切開を入れている状態です。中:歯肉を根面と歯槽骨から剥離している状態です。下:歯肉を縫いあわせた状態です。
スケーリング・ルートプレーニングが終わったら歯肉を元の位置に戻して縫いあわせます(下)。縫った傷は1週間から10日で治り、この手術によって歯周ポケットはなくなります。下の図2と図3は剥離掻爬術を受けた患者さんの手術前と後の歯肉の状態です。
<図2>第9回にも掲載した患者さんの様子です。こちらは術前の状態です。図3と比較しやすいように歯の治療をした跡を○で囲みました。
<図3>術後の状態です。基本治療と歯肉剥離掻爬術を行って6ヶ月後の状態です。
<図4>歯根の間(根分岐部といいます)のX線写真像です。歯周組織が破壊されているのがわかりますね。
<図5>歯髄を除去して歯冠を2分割した状態です。プラークコントロールがしやすくなりました。
<図6>金属の冠を入れた状態です。歯と歯槽骨の形をなおすワケ
剥離掻爬術では歯肉を歯根の面と歯槽骨からはがすので、歯の周囲にある歯槽骨の状態を見ることができるのが大きな点です。歯槽骨の形態が悪い場合には、この手術をしてなおします。これは手術を行った後の歯肉の形が歯槽骨の形態の影響を受けることが多いためです。例えば歯と歯との間の骨にくぼみがあれば、手術後にも歯肉にくぼみが見られるようになり、そうなると、その場所にプラークが付きやすくなり、取り除くのが難しくなります。このために手術をするというわけですね。
臼歯には歯の根っこが2本または3本あることが多いのですが、もしその歯根の間にある歯周組織が破壊されて、そこで歯周ポケットが作られると、患者さんまたは歯医者さんによるプラークコントロールが難しくなります。この場合、歯を2つに分割したり、1つの根っこを抜いたり、壊れた歯周組織を直接目で見えるようにする手術をすることがあるのです。
では図4〜図6の患者さんの写真をみてみましょう。図4は根の間の歯周組織が破壊されている状態を示しているX線写真です。この患者さんの場合、歯肉でこの部分が覆われていて歯ブラシなどがその部分に届かないためプラークコントロールができませんでした。そこでこの患者さんの場合、根っこの間のプラークコントロールをできるようにするため図5のように歯を分割したのです。その後、歯周組織が健康な状態になったので図6のように金属の冠を付けました。
歯肉を作る手術
歯肉の形が悪い場合には、歯肉の形を治すための手術をします。歯肉の形が悪いとプラークコントロールがしにくかったり、プラークがたまりやすくなるからです。図7の患者さんの写真をみてみましょう。下の前歯の歯肉のフチが下に下がって歯肉が少なくなっているのがわかりますね。このような状態になると、歯ブラシを使ったとき毛先が柔らかい粘膜に当たって痛みを感じるようになってきます。そこで行ったのが口蓋(上顎の歯の内側の組織)の粘膜を歯肉が少ない場所に移植して歯肉のような組織を作るという手術です。図8が手術の後の様子ですが、図7との違いがわかるでしょうか?歯肉のような組織がつくられたことで歯ブラシが使いやすい状態になりました。
<図7>前歯2本の歯肉が退縮(たいしゅく)し、歯周組織がほとんどなくなった状態です。歯ブラシがつかいにくくなるためにプラークの付着が見られます。
<図8>術後1年目の状態で、メインテナンス治療に入って6ヶ月目の状態です。メインテナンスの治療を始める前なので、まだ歯根にプラークがあり、歯石も沈着しています。
歯周組織を再生させる治療
<図9>再生療法を示した模式図です。膜を入れて縫合した状態です。
<図10>再生治療後の状態を示した模式図です。
”歯周病は治る?”の回でお話ししたように、歯周組織の再生は歯周組織の破壊のしかたが特定な形であった場合には可能になっています。その”特定の形”というのは歯周組織の破壊が図9のように斜めに起きている場合です。再生を起こさせるためには、破壊されている部位を特殊な薄い膜(遮断膜)を使います。
手術は剥離掻爬手術と同じような方法で行われるのですが、縫い合わせる前に破壊している部分の上を膜で被ってしまいます(図9)。すると図10のような組織の再生が起きてくるのです。図11と図12は、再生前と再生後の様子がわかるX線写真です。
再生が可能な範囲は遮断膜で覆うことができる範囲です。遮断膜を図9に示すように歯肉で覆わなければならないので、遮断膜を付けられる位置には限界があります。
組織の再生の方法としては、遮断膜を使用しないで、動物由来の材料を歯根に塗って再生を起こさせる方法もあります。
<図11>第9回に掲載してある再生治療前のX線写真です。
<図12>第9回に掲載してある再生治療後のX線写真です。組織の再生が認められます。
口の中にもメインテナンスが必要です
<図13>図8の患者さんです。メインテナンスを始めて2年経過した状態です。歯周組織が健康な状態で保たれているのがわかります。
治療が終わって歯周組織が健康な状態になった後でも、それですべて終わり、というわけではありません。その健康な状態を維持するために定期的な診査と、必要な場合には治療がおこなわれるのです。この行為をメインテナンス治療と呼んでいます。定期的な診査では、歯肉が再び炎症を起こしていないか、プラークが付着していないかなどをチェックします。図13は図8の患者さんがメインテナンス治療を続け、健康な状態が保たれている様子がわかります。口の中にもメインテナンスが必要なんですね。
今回は、前回に引き続いて歯周病の治療方法をお話ししましたが、歯周病をなくすためににさまざまな治療が歯科医師さんによって行われていることを知ることができました。
次回は歯周病の予防方法についてお話ししていく予定です。そもそも歯周病になりにくくするにはどうしたらよいのか、という問題は皆さんが一番知りたいことかもしれませんね。全12回のコラムを予定を変更してお届けしますので、ぜひ第13回も読んでくださいね。