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第5回では細菌が出す物質についてお話ししました。第6回では前回お話しした内毒素、酵素にひきつづき抗原について少しくわしくお話をしようと思います。
免疫のメカニズム
まずは一般的に、抗原に対して人の体がどういう働きをするのかをお話しするのがよいですね。
人の体はまず、体内に分子量の大きなタンパク質、あるいはタンパク質と多糖類や脂質とが結合しているものが入ってくるとそれが"自己"か"非自己"か(自分と同じ仲間か、そうでないか)を認識します。このとき"非自己である"と認識されたものが抗原です。抗原といわれるものにはウイルス、細菌などが出す物質、そして移植された臓器などがあります。
抗原が体内に入ると体の中で抗体がつくられ、抗原と抗体とが結合します。抗原と結びつくことで抗体は病原体の侵入を防いだり、産生物を無毒なものに変えたり、抗原を排除するといった働きをするのです。このメカニズムを免疫(めんえき)と呼んでいます。抗体には血液中にいるものと、組織に定着しているものがありますが、ワクチンなどの予防接種は、血液中にある抗体を利用して免疫システムを体の中で作り出させるのです。サイトカインネットワーク
それでは話を歯周組織に戻して抗原について考えてみましょう。抗原はいったいどのようなかたちで歯周組織に影響をあたえているのでしょうか?
歯周ポケットの中に生息している細菌からつくられた抗原が歯肉組織の中に入ると、組織の中にいるある種の細胞が抗原を"非自己"と認識します。そしてその情報が抗体を作る細胞に伝達されることによって抗体がつくられます。この仕組みは先ほどお話ししたので、おわかりいただけますね。
実はこの抗体ができる過程でサイトカインというものがつくられているのです。サイトカインとは免疫に関係している細胞などが作りだす生理活性 (形成、修復、再生の機能)物質の総称なのですが、いろいろな種類があります。例えばインターフェロン(ウィルス感染などを止める働きを持つ物質)などもサイトカインの一種です。
1種類の細胞から作られた1種類のサイトカインは複数の生理活性を持っていて、(1)別の種類の細胞に働き、その細胞を壊したり活性化させたりします。(2)その細胞はこのサイトカインの働きによって別の種類のサイトカインを放出します。このように細胞はサイトカインの影響を受けて別のサイトカインを放出することを繰り返します。この過程が繰り返され、あるサイトカインが一番最初にサイトカインを作り出した細胞に働くようになるとサイトカインネットワークが形成されます。ネットワークができることによって歯槽骨の吸収や、歯を支えている線維の崩壊が起こるというわけです。その概略を図1に示したので参考にしてみてください。
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<図1> プラークより内毒素、抗原が侵入した時の状態を示す模式図です。赤い線はサイトカインネットワークが形成されていく状態を示しています。
aは歯周ポケット中に遊走した白血球。bは壊れた白血球で、白血球内の酵素を含む色々な物質が組織内に放出されている状態。cは白血球の消化酵素や細菌の出す酵素により、コラーゲン線維の断裂が見られる状態。dは歯槽骨を壊す細胞が出現し、骨を壊している状態。
歯肉の炎症はいろいろな過程を経て起こる
歯肉の炎症は抗原抗体反応によっても起こります。
先にお話ししましたように組織内に抗原が侵入すると、抗原と抗体とが結合する反応(抗原抗体反応、免疫反応)が起こります。その際に組織に炎症反応が起こります。これが歯肉の炎症につながります。(ちなみにこの働きを応用したのがツベルクリン反応です。)
第5回でお話しした内毒素によっても歯肉に炎症は起こるので、歯肉の炎症や歯周組織の崩壊はとても複雑でさまざまな過程を経て起こるといえるでしょう。
以上プラークの中の歯周炎の直接の原因である細菌について、少し詳しく説明をしました。特に細菌のつくりだす色々な物質とそれらが歯周組織に与える影響についてお話ししてきましたが、人によって炎症の起こり方や歯周組織の崩壊のしかたには大きな差があります。これはプラークの量の多さや細菌の種類によるとも考えられていますが、それよりは細菌の作り出すものと人の体の防御力とのバランスによることのほうが大きいと考えられています。この関係を図2に示しました。細菌をうみだす病気のもとが体の防御力よりも強くなった時には病気が起こりますし、また激しい疲労で体の防御力が低下した時にも病気は起こるのです。
<図2> 細菌と生体の防御力との関係を示す模式図です。
体の健康状態が口の中にも大きな影響を与えているのですね。
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