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 前回、歯周病の原因はプラークの中に多く存在する細菌であるとお話ししましたね。今回はそのプラークの中にあって歯周病と関係のある細菌についてお話をしていきましょう。

好気性菌と嫌気性菌
 健康なヒトの歯に付いているプラークを構成している細菌はおもに好気性菌(こうきせいきん)といって、空気のあるところで生息できる細菌です。ところが歯周病になると、第2回でお話ししたように歯周ポケットが形成されますね。するとその歯周ポケット内で歯に付いているプラーク中の細菌のほとんどは、好気性菌ではなく嫌気性菌(けんきせいきん)に変わってきます。嫌気性菌とは好気性菌とは違い、空気のないところで生息する細菌です。実は歯周病と関係があると考えられている細菌がこの嫌気性菌なのです。健康なヒトの歯に付着しているプラークも歯周炎のヒトの歯に付着しているプラークも歯にしっかりと付着している状態に変わりはありません。また、嫌気性菌も好気性菌と同じようにその種類はさまざまです。
 図1では歯周ポケット内で歯に付着しているプラークを見ることができます。図2を見てください。これは図1で示したプラークの表層をみた状態なのですが、とても多くの種類の細菌がいるのがわかりますよね。


<図1>歯周ポケット内のプラークを顕微鏡で見た様子です。ただし、歯の面とプラークとの間に見られるすき間は標本を作る時にできたものです。


<図2>こちらは歯周ポケット内のプラーク表面を顕微鏡で見た様子です。実に多くの種類の細菌が見られますね。

細菌が出すいろいろな物質
 細菌による多くの病気では、細菌が体内(組織の中)に侵入することによって起こります。ですが、歯周炎ではごく一部の例外を除いては、プラーク中の細菌は体内に侵入しないで体の外側にいる(組織の外、という意味。)のが特徴です。最近では一部の種類の細菌が体内に侵入するといった報告もありますが、その役割まではまだ明らかになっていません。
 図3は電子顕微鏡の像なのですが、よ〜く観察してみると細菌(c)は上皮細胞(体の外側を被っている細胞)の
歯周ポケット側の上皮(a,d)にいるのが分かります。図4にその位置をあらわしています。歯周炎はこれらの細菌が出す色々な物質が体内に入ることによって起こされていると考えられているのです。その物質には内毒素、酵素、抗原などがあります。ではその中の内毒素と酵素についてここで少しお話をします。

<図3>電子顕微鏡でみた歯周ポケットの上皮側の状態です。剥離(はくり) した上皮細胞(b)の周囲に細菌(c)が見られ、また2つの上皮細胞(a,d)の表面と上皮 細胞の間のわずかなすき間(白い線で表示)にも細菌がいるのがわかります。

<図4>歯周炎になった歯周組織の模式図。歯周ポケット側の上皮を表していますが、この部分に細菌がいるというわけですね。

 
 細菌が作り出す毒素の一種である
内毒素(ないどくそ)がポケット側の上皮(じょうひ)を通過して歯肉に入ると炎症が起こります。炎症が起こるということはつまり、毛細血管やリンパ管が反応して白血球やリンパ球が歯肉組織中に出てくるということです。中でも白血球は歯周ポケット内にまで遊走(出てくる)してきます。それらの細胞、特に白血球は侵入してきた外来物を細胞内に取り込み消化する作用があります。白血球の消化作用は、白血球内のタンパク質などを分解する酵素によって行われます。
 その白血球が細菌や内毒素を食べた後死んで崩壊すると、白血球に含まれている
消化酵素(消化するときに必要な酵素)が外に放出されます。この現象が歯周組織内で起こると、この消化酵素によって組織が崩壊されてしまうのです。
 細菌が作り出す酵素には色々なものがありますが、歯周炎で問題になるのは、タンパク質を壊す酵素(タンパク質分解酵素)や多糖類を壊す酵素(多糖類分解酵素)です。なぜならタンパク質分解酵素は、コラーゲン線維(第1話:歯を支えている働きもしている線維)を含み、歯周組織の主要な構成要素であるタンパク質を破壊してしまう働きがあるからです。また多糖類分解酵素も多糖類に影響を与えますが、多糖類も歯周組織を構成する成分の重要な一部であるためです。(第6回につづく)


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